法華経の兵法「万人成仏」

 すべての人間に仏性がある。それを顕現させることで、仏になれる。これが「万人成仏」の思想であり、法華経の根源をなすものである。

 この根本的な思想から「一生成仏」「生命尊重」「万人尊敬」といった法華経のほかの法理につながっていく。

 どんな悪人にも仏性がある。それをよく表現しているのが芥川龍之介の「蜘蛛の糸」である。
 悪人の主人公は、道端で蜘蛛を見つける。普段なら踏みつぶしていしまうところだが、ふと慈悲の心を起こして、助けてやる。仏性が僅かながらだが、顕現したのだ。
主人公は地獄に落ちるが、生前の善行により仏から救いの手が差し伸べられる。蜘蛛を助けたのが善因となって、地獄に糸が垂らされたのだ。

 自分と性格の合わない人、国籍が違う人、自分を嫌っている人、すべての人に仏性があり、いまは凡夫かもしれないが磨けば必ず仏性が現れ、仏となる。すべての人が仏になり得るのであるから、どんなに気が合わなくても、尊敬の念をもって接しなければならない。