米新政権の外交 要約メモ
アメリカは期待するほどカムバックしない
アメリカは新政権になっても同盟国が期待するほどカムバックしない。
理由1 国内の社会的混乱
ブラックライブズマター運動や新型コロナウイルスによる社会的混乱のために政治資源を国内に投入しなければならない。
理由2 介入主義的態度の変更
オバマ政権からすでに介入主義的な態度を改め、イラクやアフガニスタンなどの戦線から撤退を決めてきたこと。
理由3 覇権の衰退
ブレトンウッズ体制の崩壊(金・ドル交換停止)やベトナム戦争敗戦以降、アメリカの公共財を提供する能力が大きく低下している。
ヨーロッパへの影響
ロシアの脅威を無視できないので、2万人規模のドイツからの米兵撤退は撤回された。
フランスのマクロン大統領が模索していた欧州軍構想は、イギリスのEU離脱により腰砕けになる可能性がある。
トランプ米大統領はNATOを「時代遅れ」、マクロン大統領は「脳死状態」とし、距離を取る姿勢であった。バイデン新政権の中途半端な国際協調路線は、EUの自律を模索する路線の修正をもたらすかもしれない。
対中国
中国に対してバイデン新政権は経済領域では実利的協議を進め、一方で人権問題などについては、より強硬な態度に出ることが予想される。
日本はポスト冷戦期に「リベラルな国際社会」の担い手の一員として、「自由で開かれたインド太平洋構想」「日EU戦略的パートナーシップ」を展開した。
日本は中国の戦略的脅威と経済的依存が欧米より非常に大きいなかで、中国に対して、どのような姿勢で望むのかが課題になる。
※この記事は、公明新聞2021年1月9日号の北海道大学大学院法学研究科吉田徹教授よる展望を参考にしました。