建築家安藤忠雄氏インタビューまとめ(聖教新聞2021年1月7日号より)

独学

 安藤氏は学力や家庭の経済的問題から工業高校を卒業後、大学には行けず、独学で建築を勉強された。

 京都大学に通っている友人に使っている教科書を教えてもらって、それをアルバイトをしながら懸命に読み込んだ。

 また、建築の本物をひとつでも多く体験しようと、関西近郊から日本、世界へと建築行脚に出かけた。

独立

 28歳のときに自身の建築事務所を開設。「生き方がおもしろい」という理由でサントリー佐治敬三アサヒビールの樋口廣太郎、京セラの稲盛和夫などから大きなチャンスを与えられる。

 「自分の足で立ち、苦しくとも前を向いて走っていれば、時に応援してくれる人も現れる」

読書が大事

 「自由や勇気を言葉で学ぶ本は、心の栄養」

 子どもの頃から優れた本にたくさん触れさせ、考える力を付けさせることが重要であるとし、2020年7月に大阪・中之島に「こどもの本の森 中之島」をオープン。

「ない」ことは幸せ

「『ない』なら『ない』ことを受け入れて、覚悟を決めること」

 安藤氏は2009年と2014年に、がんの大手術をして、胆のう、胆管、十二指腸、膵臓脾臓の五つの臓器を全摘出。「ない」なら「ない」に合わせた生活をするしかないと割り切り、医師の言う通りに生活に一新し、今では手術前より体調はいいという。

 また、五つも臓器がないのに元気なのは縁起がいいということで中国から大きなプロジェクトのオファーを受ける。

 病気で失ったものもあったが得たものもあった。

信用と文化力

 「今後は本当に厳しい社会になっていきそうです。働く場所もなくなってくるでしょう。日本の国も、かじ取りが難しいですよ。経済に偏ることなく、科学技術や文化・芸術といった分野も引き上げていかないと、世界は信用してくれません。国際社会における力とは『信用』ですから。
 日本にも、海外から評価されるような独自の文化力がありますよね。それをいかに生かすかというところから始めていけばいいんです。”今あるもので、どこにもない価値を生み出していく”柔軟な姿勢が必要です」

メッセージ

 「誰にもまねできない、自分なりの生き方を貫くというのが、一番豊かなこと」

 「今後は、周囲に流されず、皆が自分の生き方を自分で探し、創っていく時代になるでしょう」

 「この道では誰にも負けないと誇りが持てるよう頑張ってほしい。世の中は、もっともっと変わっていきます。言い古された言葉ですが、”逆境こそチャンスなのですから」 

 「まずは、スマホの使用時間を、今の半分にしたほうがええね。突っ張って生きていくには、便利もすぎると、”不便”